不倫慰謝料請求の流れと弁護士に依頼するメリット
1 不貞行為とは
配偶者以外と肉体関係を持つ行為は一般的には「不倫」といわれていますが、法律上は不貞(ふてい)や不貞行為と呼びます。
夫婦は配偶者以外と不貞行為をしてはいけないという義務を負うとされており、これを「貞操義務」といいます。
貞操義務は民法に夫婦の義務として明文化されてはいませんが、これを怠ると離婚事由になりますので、夫婦の義務の一つと理解されています。
2 不倫慰謝料請求
配偶者が不貞行為を働いたとき、貞操権を侵害された配偶者は離婚を求めるだけでなく、精神的損害に対する慰謝料を請求することができます。
これを不倫慰謝料請求といいます。
不倫による慰謝料は配偶者のみに請求してもよいですし、不倫の相手方のみに請求しても、その両方に請求しても構いません。
ただし、両方に請求する場合に請求できる金額は精神的損害の範囲に限られ、双方からの「二重取り」は認められません。
夫婦は財産を一緒に管理していることが多いため、婚姻関係を継続する場合は不倫の相手方のみに請求するのが一般的です。
3 不倫慰謝料を請求する場合の流れ
⑴ 証拠の収集
不倫を理由に慰謝料を請求するためには、不倫があったということを示す証拠を押さえておくことが何よりも重要です。
「いつも帰り遅い」「知らない女性から着信があった」というだけでは不倫があったとは認められません。
また、2人で食事に行った、手をつないだ、キスをしたというだけでも不倫とは認められません。
不倫の証拠の例としては、二人でラブホテルに入っていく写真や映像や、性行為があったことを示すメールのやりとりなどが挙げられます。
メールのやりとりの場合、「昨日は楽しかったね」「また会いたい」という程度の内容では証拠として弱いでしょう。
⑵ 相手方に通知を出す
不倫の証拠が揃ったら、不倫相手に対して慰謝料を請求する旨の通知を出します。
通知の内容と通知をした日付を証明するために内容証明郵便を利用する場合もありますし、証拠写真を同封する場合などには書留が利用される場合もあります。
不倫相手に通知を出すときには、最低でも不倫相手の氏名と住所がわかっている必要があります。
⑶ 交渉
通知を出したことにより不倫相手がすんなりと要求に応じてくれる場合もありますが、応じてもらえない可能性の方が高いと考えておいた方がよいでしょう。
不倫相手が要求に応じない場合には、交渉を行います。
交渉においては、不倫行為の動かぬ証拠があることや、その回数、不貞行為によって受けた精神的な損害などを主張します。
不貞行為によってうつ病などを発症した場合には、それを証明する医師の診断書を提出することもあります。
⑷ 裁判
交渉によって和解に至ることができなかった場合には、訴訟を提起することになります。
訴訟によって裁判官に主張が認められ、勝訴判決を得ることができれば、不倫相手に対して強制執行をすることができます。
⑸ 弁護士に相談するメリット
このように、不倫による慰謝料を支払ってもらうためには、どのような証拠が必要なのか判断し、それらを集め、不倫相手の氏名と住所を調べて通知を出し、交渉を行い、場合によっては訴訟を提起するという手続を踏む必要があります。
十分に準備をして適切な形で請求を行わなければ、不倫相手から反論を受けて適切な額の慰謝料を受け取ることができなかったり、紛争が長期化してしまったりするおそれがあります。
また、相手方に出す通知も本人名義で出すのか、弁護士名義で出すのかによって相手方に与える心理的なプレッシャーが変わってきます。
不倫の慰謝料を請求するときには、弁護士に相談しましょう。
4 不倫慰謝料を請求された場合の流れ
⑴ 通知が届いたら
では、逆に慰謝料の請求をされてしまった場合にはどのような対応をすればよいのでしょうか。
慰謝料を請求される側にとっては、通常、相手方から慰謝料を請求する旨の通知が突然届くことになります。
本人名義で届くこともあれば、代理人弁護士から届くこともあります。
通知には、不貞行為により精神的な損害を被ったため、指定の期日までに慰謝料を振り込むようにという内容が記載されています。
通知の内容は法的な拘束力を持つものではなく、指定の期日までに金銭を振り込まなかったとしても不利益を受けることはありません。
しかし、相手方が訴訟を提起するなど新たな手段を講じてくる可能性がありますので、早めに弁護士に相談して交渉の準備をした方がよいでしょう。
⑵ 交渉と裁判
交渉においては、まずは相手がどのような証拠を元に不倫があったことを主張して請求を行っているのか調査し、可能であれば反論を行います。
不倫が事実ではないのであれば、それを立証する証拠を提出することによって請求を取り下げさせたり、裁判で争ったりすることが可能です。
不倫を行ったことが事実であり、相手方が十分な証拠を提出してきたとしても、相手から請求に全面的に応じる必要はありません。
慰謝料請求を行う場合は示談での解決を見越して高額な慰謝料を請求してくる場合が多いため、適正な慰謝料の額にまで減額するべきです。
請求自体を拒む場合には、相手方から訴訟を提起される可能性が高くなります。
もちろん訴訟で徹底的に争うのも一つの選択肢ですが、訴訟には費用がかかりますし、訴訟は公の場で行われますので、費用を抑えたいときやトラブルになっていることを人に知られたくないときには交渉による解決を目指すことになります。
⑶ 弁護士に依頼するメリット
交渉を行うにせよ訴訟で争うにせよ、不倫慰謝料を請求された場合の対応には高度な交渉力と法的知識が要求されます。
また、不倫慰謝料請求においては相手方が感情的になっていることが多いため、対処を誤ればさらなるトラブルに発展するおそれもあります。
相手方から不倫による慰謝料を請求する通知が届いたら、交渉と法律の専門家である弁護士に相談しましょう。
5 不倫慰謝料でお悩みの方へ
配偶者が不倫をしていることが判明したら、大変ショックでしょう。
また、不倫の相手方の配偶者から突然内容証明郵便が届いたら、驚いてしまうのは当然です。
不倫問題は非常にデリケートな問題ですので、当事者同士だけでの交渉は難航してしまう可能性が高いです。
不倫慰謝料請求をする場合もされてしまった場合も、第三者である弁護士が間に入ることでスムーズな解決を測ることができます。
不倫慰謝料問題でお悩みの方は、是非一度ご相談ください。